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状況が裂いた部屋

音楽と映画と日常について

好きな枡野浩一の短歌5選

 
   学生のあなたの夏を聞きながら
   働く日々がわが夏休み


さっぱりした感じが好きだ。年下の彼女が欲しくなる…コメントの文章がよかった。「映画館へ、海へ、朝顔市へと飛びまわる彼女の話に、笑ったり感心したりしながら、頭の中を真っ白にして働いた。彼女の長い長い夏休みを思うことが、休暇をとれない僕の夏休みだ、と思っていた。」
 



   いつの日か疎遠になろう俺たちも
 小夜楢岳の人生の中


「さよならだけの人生の中」と読む(多分)。
一番好きかもしれない。



 
    無理してる自分の無理も自分だと
 思う自分も無理する自分


小説「ショートソング」の中で、この句に魅せられて短歌の世界に入ったハタチの沖縄美女が主人公の片方(モデルは明らかに枡野浩一本人)に会いに来て、その日のうちにセックスする、という話がある。「ショートソング」についてはいつかしっかり感想を書きたい。とにかく読んでほしい。漫画版もある。
 



   こんなにもふざけたきょうがある以上
   どんなあすでもありうるだろう


仕事がボロボロで毎日日付けが変わる頃帰宅していた頃、通勤のバスでこの句を読み、なんとか乗り切ろうという気になれた。



 
   だれからも愛されないということの
 自由気ままを誇りつつ咲け


短歌は短いだけあって最初目にした時に瞬間的に「よい!」となるか否かの判断ができてしまうのが面白いと思う。もちろん何度も読み返してじわじわ来るのもあるんだけど。(個人的に「スルメ短歌」って呼んでる)これは見た瞬間スッと入ってきて、今でも最高にクールだと思う。しかし単行本の「淋しいのはお前だけじゃな」に「恋してるからって急に いい人になっちゃ駄目だよ 物書きでしょう?」という短歌があり、これは昔好きだった人に「最近、書くものに毒がなくなったんじゃない?」と言われて詠んだらしい。


 
2006年、集英社文庫「ショートソング」
2008年、集英社文庫「淋しいのはお前だけじゃな」(どちらも著:枡野浩一
より引用