状況が裂いた部屋

音楽と映画と日常について

愛と笑いの夜

 iPhoneのメモ帳に残っていた、今年の5月頃の飲み会の記録。ゼミの同期、後輩と男3人でただ集まって飲んだだけなんだけれど、単純にとても楽しい夜だったので文章にしておく。

 

 

 ある金曜日の夜、その飲み会は新潟の古町で決行された。古町は駅から徒歩15分はかかるし、僕以外の2人はまだ学生なので、街まで出てきてもらうのはちょっと遠くて悪いな、と企画して思ったが、案の定2人とも大幅に遅刻してきた。到着した2人はボロボロだった。後輩の方は右膝の十字靭帯を断裂しており、若干足を引きずって歩いていた。バイト中の事故だったらしい。もうひとりの方は2留しており、3度目の大学3年だったが、その日の講義をサボったせいで今期で受講が5回目となる必須を落としたとのことだった。ボロボロの学生2人が揃ったところで、とりあえず乾杯し、焼き鳥屋で一次会が始まった。

 2人の近況やゼミの状況(“2留”はゼミに出てないのでわからないようだったが)、大学周辺の飲み屋の変遷などひととおりの話題が終わった頃、入り口からうちの課の課長が入ってくるのが見えた。僕は職場では真面目な新卒2年目の爽やかな青年を演じているため、口には煙草を咥えた状態で、右側にはどう見てもカタギではない外見の体重90キロの元アメフト部、向かいには25歳なのに大学3年の引き篭もり(外見ではわからないだろうけど)を従えて飲んでる構図。あまり上司に見られたくない状況だった。しかし逃げ場は無かったので立ち上がって挨拶すると、課長は一瞬かなり驚いた顔をしたけれど、片目を瞑ってにっこりし「お互い、他人のふりな」と言った。いい人だと思う。その後もしばらく飲み、次の店に移動した。

 

   学生2人にわざわざ街中まで来てもらって飲む目的は、シーシャ屋に行くことだった。前回学生街でゼミ飲みをした際、シーシャ屋に行きたいな、と言ったらこの2人が乗ってきた訳だ。しかし2軒目にはまだ早いかな、と近くのクラフトビールが飲める店に入る。

   その店には結局3時間近く滞在した。後輩がつい昨日女の子にフラれたことをぶちまけたので大いに盛り上がり、気付けば店員の女性と店長さんの5人で恋愛談義になったからだ。完全に酔っ払た後輩はその子とのLINEの会話を見せてきたので4人で携帯を回してじっくり鑑賞したが、なかなかになかなかな内容だった。店長さんはかなり経験豊富らしく、デートの誘い方、一緒に出掛けた翌日の接し方、距離の詰め方、などなど様々なテクを教えてくれた。どれも成る程と思えるアドバイスだったが、あくまで僕のパターンですけどね、と一つの手段として参考までに、というスタンスなところが好感が持てた。一方の僕は大した経験もないのでアドバイスなど持ち合わせてなく、一般論しか言えなかった。こういう話題は専ら聞き役に回るのがいい。2留は爛れた恋愛しかしてこなかったようで、店員ちゃんとジョジョの話に興じていた。いよいよ酔って呂律が回らなくなった後輩が話題の女の子の写真を見せてきたが(専用のフォルダがあった)、めちゃめちゃに可愛かったので店長とプロレス技を掛けようとしたが2人とも簡単に組み付されてしまった。アメフト部は強すぎる。ドイツの黒ビールが美味しかったが名前を忘れた。シュトロハイムは2部に出てくる軍人だしな…。

   時間は確か11時に近かった。終電で各々の家に帰るなら駅に向かわなくてはならない。かなり酔っ払った状態で通りに出ると、肩を貸さないと歩けない人、側溝に半分落ちた状態で寝ている人、客引きのお姉さんと会話にならない会話をしている人など、金曜の夜の飲み屋街はカオスな活気に満ち溢れていた。お酒に飲まれた学生が駐車場に行き倒れてたり、喚き散らしたりしていた学生街の風景が思い出された。2留がどこも変わらねえな、と言って煙草に火を点けた。僕はなんだかとても楽しい気分だった。ここでなんとなく写真を撮ったんだけれど、全部ぼやけている。

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この写真は僕も写っているため、自分で撮った訳ではないのだが、誰が撮ったのか全く記憶にない。サニーデイサービスのアルバム「愛と笑いの夜」みたいで気に入っている。

 

   終電に乗らない選択をし、3軒目は念願のシーシャ屋へ入った。注文の仕方もさっぱりわからなかったので教えてもらいつつ、適当にシナモンとバナナのフレーバーと、ミントのフレーバーを注文した。あのインドっぽい吸入パイプのついた金具に火をくべ、フレーバーを入れていたが器具の観察より隣のソファで乳繰り合ってたカップルが気になった。そのカップルはすぐ居なくなり、狭い店内のほかを見渡すとなかなかに独特でいい空間だった。Macで何かの作業をしている人、ジェンガをする女の子たち、ポロポロとアコギを弾いてる男、などなど、煙の向こうでみんな気怠そうに何かの作業をしていて、でも取り組んでいるものはあくまで暇つぶしで心ここに在らず、という雰囲気が共通していた。僕にそう見えただけかもしれないが。

   後輩は火の鳥を手に取ったがすぐに眠ってしまった。僕たちもやっぱ望郷篇だよな、わかる、でも未来編も好き…と推し篇の話をしつつ少し読んだが、結局オセロをやった。2留はさっきオセロ世界一の人の試合ユーチューブで観たんだ、と言って僕を圧倒した。

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    オセロを何ゲームかしたあと、2人で様々な話をした。漫画の話、小説の話、就活の話、旅行の話、などなど。2留は地元には数人友達がいるらしく、最近大洗へガルパン聖地巡礼に行ったんだ、と楽しそうに話した。僕が7月にタイに行くんだ、と言うと大麻やるなら絶対バレないようにうまくやれよ、と言われた。あとハングオーバー2を観ることをおすすめされた。

 

   居心地がよく、シーシャもずっと吸ってられるのでかなり長い時間いたが、結局後輩を叩き起こして外に出た。夜の街のカオスは治まって静かだった。近くのラーメン屋にはいる。当然のように大盛を頼む2人に現役学生の若さを見せつけられた。

    信じられないことに、このラーメン屋に3時間くらい滞在した。映画の話で盛り上がったからだ。

   2留のスマホの待ち受けは口が裂けたピエロの写真だった。僕がヒース・レジャーだ、と指摘すると彼はめちゃめちゃ嬉しそうにわかるか、もう死んじゃったけど、とダークナイトの話をし始めた。バッドマンシリーズでも一番の傑作だと思う。ヒース・レジャージョーカー役の役作りの為、ホテルの部屋に閉じこもったエピソードなどを語り合った。一瞬でラーメンを食べた後輩が暇そうで悪かったので、エイリアンの話をした。エイリアン1のラスト、宇宙船に穴が空きエイリアンが掃除機の吸引みたいに外に吸い出されるシーンの最高さ加減について真剣に語り合った。これ以上ない最高のスプラッタ映画だ。しかし2001年宇宙の旅然り、スターウォーズのローグワンのラスト然り、生身の人間が一瞬ハッチの向こう、宇宙空間に出るシーンがあるがその辺判定甘いのどうなんだ、絶対死ぬしダメでしょ…。しかし後で見返したところローグワンはダースベイダーだったし、奴の服は宇宙服も兼ねてるらしいと結論付けられた。そこから、我々が小学生の頃金曜ロードショーでやっていた名作を語り合った。コマンドー、ハムナプトラ、バックトゥーザフューチャー、ダイハード、ホームアローンタイタニック、タクシーシリーズ、ミッションインポッシブル、マトリックス… なんであんなに面白かったんだろう、いやいま見ても面白いんだけれど、なんか小学生の頃リビングで夜更かしして観たあのワクワク感ってなんだったんだろう。あの頃のシュワちゃんってこの世で最強だと思ってたし2015年にはホバーボートをみんな乗り回してると信じてたよな、あの感じってもう帰ってこないんだろなあ…と最終的に感傷的になってしまった。

   2留は映画クラスタであり、ネットフリックスに入ったことが引き篭もりに拍車をかけているようだった。あの24が全部見れちゃうんだぜ、とジャック・バウアー役のキーファー・サザーランドが子役時代スタンドバイミーの不良グループのボス役として出演していたことを教えてくれてまじかよと愕然とした。そしてしきりにロードオブザリングの「王の帰還」で呪いが解けた王が目覚めるシーンのモノマネをするのだった。ちゃんとして卒業してほしい、と思いつつこいつにはずっと学生やっててほしいとも思う。

 

   朝方、始発前の駅まで歩いた。帰り道にウォークマンomoide in my headとアパルトの中の恋人たちを聴きながら帰った。時々でいいから、またこんな夜があればいいなと思う。