状況が裂いた部屋

音楽と映画と生活

禁断の多数決に首ったけ

 


禁断の多数決「トゥナイト、トゥナイト」
輝くネオン、打ち上がる花火、アンニュイな感じの女の子、謎のコンテンポラリーダンス、怪しさと華やかさ、危険な香りと劇薬のような刺激、ミステリアスでエロティック、ロマンチックでどこかグロテスク、めちゃくちゃに見えて計算されつくした絶妙なバランス、ミニマルさと壮大さ、果てしない遊び心。どこまでも無邪気でかつ幻想的な世界観。語り尽くせないほどの魅力が詰まっている。

あらゆる創作物をごちゃ混ぜにして、それをこんなに美しい表現として映像に落とし込むセンス。なんなんだろうこの人たちは。


初めてこのPVを観たときには、全く脈絡のない画のカオスな連続が脳内で処理できないという若干の拒絶感を感じ、しかし同時に矛盾するようだけれど「全ての画が強い、そして美しい」という魅力に惹きつけられて、気がついたら狂ったように繰り返し観ていた。どうやって思い付いて、どうして撮ってしまったんだ、というナンセンスとも言えるシーンの応酬。全てがやたらと色っぽい。カットが加速する終盤から笑顔に収束するラストまでの流れが最高。あと登場する女の子がみんな可愛い。

そして自分の記憶にどこか引っかかるものを感じて思い出したのが、小さい頃に観た深夜番組だ。夜中に目が覚めた時、ふと横を見ると親の肩越しにテレビが見える。画面に映っているのはキラキラした女の人ばかりで、時々出るデカい文字や(まだテロップを知らなかった)派手な音楽から、なんとなくあやしい雰囲気を感じ取った。内容は全然わからないけれど、自分の知らない世界を覗いてしまったという畏れと少しの興奮。大人たちがこんな夜中にわざわざ起きてまで見るなんて(そして子供にはもう寝なさい、と言って絶対見せてくれないなんて)さぞかし面白いものが放送されてるんだろうな、と思い込んでいた。あの頃のおぼろげな記憶の中にある「大人たちの好きな怪しい世界」と「サブカルチャー的な何か」という謎に包まれていた概念が、ついに形となっていきなり目の前に現れた、という受け取り方をした。

 


tonight, tonight R18+vanilla night - kindan no tasuketsu

ちなみにこのPVにはR18版と銘打った別バージョンがある。割と怖い。兎丸愛美が美しい…。殆ど同じ映像の編集でここまで不気味になるものか。


この「トゥナイト、トゥナイト」が2013年。YouTubevimeoにはPVの他、ゆるいアルバム紹介や全く訳の分からない映像まで合計50本以上が上がっている。その全てが独特の雰囲気を持った凄い完成度の作品で、本当に面白い。中心人物であるほうのき氏が監督を務めることが多いが、グループ外の人が撮ったものやイラストレーターでもある大島智子の作品もある。

あらゆるアイデアをぶち込んで、こんなにぶっ飛んだ傑作を生み出してしまうほうのきかずなりという人間はどんな人なんだろう。創作の根源みたいなものはどこにあるのか。曲や映像のはどこから着想を得ているのか、どんな人生を送ったらこんなものが作れるのか。一時期ネットに上がっているインタビュー記事を片っ端から追って読んだ。ツイッターやインスタをフォローしているけど、かなりの映画フリークらしい。確かに知識のない自分にもこれはあの映画へのオマージュかな、とか、あの作品の雰囲気が出てるな、とか連想できる映像がいくつかある。一度飲んで話してみたい。


禁断の多数決は目まぐるしくメンバーが入れ替わるグループで、最近wikiが更新され(多分スタッフの手で)、何年に誰が参加したかがやっと判明した。現在第4期が始まっているらしい。アルバム1枚取っても曲ごとにボーカルが変わるし、曲調もバリエーションがありすぎて明確なジャンル分けなどとてもできない。しかも1枚20曲とか入っている。おそらくライブより飲み会が多いゆるい活動スタンス、毎回やたらとコンセプトが強いイベント、ツインピークス的世界観、ほうのき氏が撮る映像や映画、ZINEに載っているシノザキサトシ氏の独特の音楽レビュー(たまらなく好きな文章だ)、そして新倉のあガチ恋オタクな自分としてはブラジルの癖の強い可愛さなどあまりにも色々な面から語りたいグループなんだけれど、ここでは映像に、それもほうのき氏の作品にフォーカスして書く。

 


禁断の多数決 - さようならマイワールド

禁断の作品の中でも一番好きなのがこれ。初期のアルバム「禁断の予告編」に収録されている。遊ぶ子供たち、夕暮れの海岸、一面の雪原を歩く女の子、闇に浮かぶモノレール。特別な撮影方法が使われているわけでもなく、遠景とぼかしだけでこんなに美しい映像に仕上がるものなんだろうか…。いつも感心しながら見ている。ほうのき氏は富山在住とのことで、スケートリンクの場面などは富山のスケート場のものっぽい。禁断の映像によく登場する風景は「こんな画がほしい」と思ってロケに行くわけではなく、彼がどこか行ったときに「これ使えるな」と思ったものをその場で撮ったりしている気がする。インスタでガソリンスタンドの絵を気に入って撮影させてもらったとか言ってたし。メンバーが登場する映像は彼が上京した時に撮っているらしい。照明と影がクリーンな質感で、とにかく美しい映像。

 


禁断の多数決 - Great World of Sound

最高のアルバム導入曲。禁断のPVには時々、何故か元ふぇのたすのみこが出演している。恍惚とした女性の表情がエッチすぎる。初期のやたら森に行ってなんかやってる変な人たち、というあの感じが見事にぶち込まれている。禁断の活動にはお化け屋敷の開催や近所の子供たちとのペイント遊びなどがあったが、ハロウィンに仮装行列行進をやってみたり、EPのタイトルにクリスマスやお正月を入れちゃう、などイベント行事が好きらしい。「Santa Claus Is Coming Back」「Merry Christmas Mr.Walken」などやたらクリスマス推しなのが良い。

 


禁断の多数決 - The Beach (Original Ver)

映像もボーカルも、輪郭がおぼろげで重なり合う感じが良い。「午後の冒険者」でも主演してるけれど、当時高校生であったはずの阿部はりか、佇まいとか表情とか惹きつけられる。初期の中心だった尾苗愛&ローラーガールが脱退し、その後メンバーが入れ替わった2014年に「エンタテイメント」EPが出て新生禁断が始まる、というタイミングで脱退してしまったので当時は結構悲しんだ。2015年に出るはずだった新譜が吹っ飛んだのはなんだったのか。阿部はりかはその後は演劇の表現に向かっていったけど、今年公開の監督映画「暁闇」をめちゃめちゃ楽しみにしている。

初期の代表曲。サビが完全にペットショップボーイズ「Home and Dry」だと指摘されていたが確かに完全にそれ。阿部はりかとお馴染みの人形たちの行進のシーンで、いつもフレーミングリップスの「Do you realize??」のPVを連想する。ほうのき氏の謎のダンステクはなんなんだろう本当に最高。曲としても名曲。中盤の間奏のベースラインがシンプルに好き。「アニバーサリー」や「ココアムステルダム」などベースがめちゃめちゃ良い曲が時々あるけど誰が弾いてるんだろう。

 


禁断の多数決 - In The Mouth A Desert (Pavement cover)

Pavementの名曲カバー。なんとなく青春、って感じがする。セピア色のフィルム越しの尾苗愛が美しい。気怠いボーカルも良い。時々観ては何故か泣きたくなる。

 

貼った動画を見返したら2013年頃のものばかりになってしまった。最近の活動も面白く見てるんだけど。この半年は第3期を総括するようなライブをやっていたようで、「真夏のボーイフレンド」を数年ぶりに披露したらしい。観たかった。ちなみに曲で一番好きなのは加奈子ボーカル曲の「Blue」。ブラジル作詞のシューゲイザーソング「チェリーフォールズ」(ほうのき監督作品ではないが)や、作曲陣が手がけているJC+The Mechanicsの「Night Breeze」など、シューゲ要素のある映像もすごく良い。あと割と最近の映像はVaporwave風味で良さがある。もともと活動初期はコラージュ画をHPに多く上げていたりしたし、そういった方面に接近するのも納得。第4期の新曲がもうすぐリリースされるらしいのでずっと楽しみにしてる。また初期のぶっ飛んだあの感じ、訳がわからないけどなんか面白そうなことしてる集団、って感じの表現をやって欲しい。