状況が裂いた部屋

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黒部峡谷探訪記

11月上旬、黒部峡谷パノラマ展望ツアーに参加した記録。

国内、国外を問わず、自分は旅行でツアーというものに参加したことがない。旅行のプランを立ててもらえて場合によっては安く上がるのは良いかもしれないが、時間や行動を制限されて聞きたくもない説明を聞くのが面倒だからだ。

今回黒部峡谷へ行きてえな、と思って調べるとトロッコ列車に乗れるツアーがあると知った。正確に言うとトロッコ電車は誰でも乗れるけれど、ツアーではその先の一般客が普段立ち入れない関西電力の施設が観れるという。バックヤードツアー的なものに興味があった自分は即予約を入れてしまった。黒部方面には日本唯一のトロリーバス(関電トンネル無軌条電車が運行していたのに2018年で運行が終わってしまった。いつか乗ろうと思っていたのに。代わりにせめてトロッコに乗って無念を晴らしたい気持ちもあった。

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黒部ICで高速を降り、黒部川沿いに県道13号線を上流へ進む。しばらくするとJR富山地鉄の終点である宇奈月温泉駅があり、すぐ隣には黒部峡谷鉄道宇奈月駅がある。今回乗車するのは黒部峡谷鉄道のトロッコ電車。ちなみに北陸新幹線が停車する黒部宇奈月温泉駅というものもあるため、「宇奈月」駅は3つも存在する。近くの駐車場に車を停めて駅の2階でツアーの受付をした。終点欅平駅までのトロッコ列車往復券を含んで代金は6,000円だった。

 

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かわいいサイズの列車に乗り込み、欅平駅まで80分程度の移動を楽しむ。先頭にある客車を牽引する電車は228馬力とのこと。窓無しの車両だったためひどく寒い。顔に直接風が当たって耳が痛いがだんだん慣れる。基本的に左側は崖、右側は黒部川の景色が見られる。

 

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列車が動き出してすぐに、室井滋のナレーションが始まり沿線の名所や地名の由来を紹介してくれる。最初に見えてくるクッパが住んでる城みたいなやつが新柳河原発電所。川の色は見たことないような緑がかった青だった。当然ながら深さによって色が変わっていく。時々山に入る引き込み線がある。川にはいくつか橋が架かっているが、途中に一本猿専用の細い橋が架かっていて面白かった。実際に渡っているところは見れなかったけれど線路沿いに普通に猿はいた。

 

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ツアー以外ならいくつか途中下車できる駅がある。インスタの隆盛に乗っかってなのか顔はめパネルが沢山ある。鐘釣駅で少しスイッチバックした。線路と並行して冬季歩道がずっと通っている。幅は人ひとりが通れるくらいしかない。このトロッコ列車は11月で運行は終わり、一部は雪対策の為枕木まで外すそうだ。雪崩の威力は凄まじく、ホウ雪崩というものはマッハ3の速度で鉄筋作りの建物を吹き飛ばすこともある。そのため、運休期間には最奥地にある発電所の管理者は数時間かけてこの歩道を歩いて仕事場へ向かうらしい。しかし関西電力は社員を猿として表記するとは恐ろしい会社だ。

 

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欅平駅に到着し、案内人である関電のおじさんたちが出迎えてくれる。一般観光客が入れないトンネルや関電施設に入っていく。ヘルメットを被り、途中までは工事用の凸型(トツガタ)機関車に乗り換えて進む。トンネルにはダイナマイトで爆破した素掘りの跡が残っていた。竪坑エレベーターで200m登り、展望台へ辿り着く。

 
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エレベーターを降りた地点の展望台から更に10分ほど登ると、白馬鑓ヶ岳や毛勝三山が見える地点がある。見渡す限り360°全てが巨大な山。ちょうど紅葉していて見事な景色だった。こんなところにも鉄塔は立っていて、電気が使える。この後出てくる黒部ダム建設現場でも思ったが、必要があれば人間はどんな困難な工事でもやってしまう。今でこそ近辺の発電所は大きな電力を供給する欠かせない存在であるけれど、昭和中期の開発当時、こんなに困難な工事に膨大な費用と労力を費やすモチベーションを持てたことが凄い。

 

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欅平駅の真下には黒部川第三発電所がある。世紀の難工事と言われた黒部ダム及び黒部第四発電所(通称クロヨン)はさらに上流の地下にあり、黒部峡谷ロッコの沿線から見ることはできない。黒部ダムの建設では171人の犠牲者が出たとのことだ。工事用車両に付いている関電のマークはボルトのVとアンペアのAを掛け合わせたもの。そもそも富山県北陸電力の管轄なのに、何故この周辺の発電所は関電なのかというと、この発電の送電先が関西で、関電が主体となって建設したからということだった。2001年放送のプロジェクトXでクロヨンを取り上げていただいて、2002年の紅白で中島みゆきさんがここから中継で歌ったんですよー!と関電のおじさんが写真を見せてくれる。

 

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欅平駅にはレストランやビジターセンターなどが併設されており、帰りの電車まで時間を潰せる。センターの2階にはいい感じのジオラマがあった。帰りのトロッコもナレーションで沿線の解説がある。猫又駅の由来の話になり、猫に追われた鼠が岸壁を登ろうとしたところ、急すぎて登れず、追ってきた「猫もまた」、登ることができなかった→猫又、なのだそうだ。本当かよ。また、黒部という地名はアイヌ語で狂う川、魔の川を表す「クルベツ」が転じてクロベとなったらしい。

 

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宇奈月へ帰還。近くにあった電気記念館に入ってダム建設の映像を見るなどする。温泉街を歩いたら銭湯(一応温泉か)があったので入る。外観が綺麗すぎて一見銭湯には見えなかった。3階が男性風呂で、湯から上がったあと涼もうと4階に行ったら謎スペースで笑ってしまった。階段前のわずかな場所にマッサージチェアが1個だけ置かれ、使いづらいことこの上ない。風呂は良かった。外に足湯もある。

 次は黒部ダムも見たいと思う。立山黒部アルペンルートは鉄道・ケーブルカー・ロープウェイと幾つも乗り物を乗り継ぐことになるので楽しみ。あと先日奥只見ダムへ行きダムカードをゲットしたので、黒部ダムカードも何としても手に入れたい。