状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

東北旅行記②

○ 3日目

宮沢賢治記念館

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朝食を食べに外に出て気付いたが、この街には映画館がたくさんある。「映画館通り」があり、通り沿いに何軒も密集しているようだ。普通の雑居ビルの5階とかにある1シアターしかない映画館とかいいなあと思う。仕事帰りに寄りたい。

 

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f:id:ngcmw93:20210816181340j:image盛岡城跡公園内にあるもりおか歴史文化館へ行った。1階部分は無料、2階の企画展示は有料。チャグチャグ馬コと山車がある。盛岡藩八戸藩の歴史は面白かった。持病の痔が治らず、そのせいで参勤交代を3回も延期してもらってる殿様がいて不憫だった。

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f:id:ngcmw93:20210817173947j:image盛岡城跡公園内に隣接する櫻山神社にお参りし、烏帽子岩を見つけた。なんか祀られてるでかい岩。盛岡藩主だった南部利直が盛岡城を建てている際に出たものらしい。

「岩手」の地名の由来となった鬼の手形がある三ツ石神社にも寄りたかったが、雨が降ってきたので止めて、南へ移動。

 

この日の目的は宮沢賢治記念館へ行くこと。龍泉洞も行きたかったが、岩泉町は盛岡の北東にあり、移動のことを考えて諦めた。

東北の大動脈にして陸上の国道として最長を誇る国道4号で南下。勝手に絶滅したと思っていた弁当屋「ほっかほっか弁当」が存在していた。あとインディとかいうパチンコ屋がやたらある。

沿道を観察しつつ、花巻市へ着く。

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f:id:ngcmw93:20210816181854j:imageまずはイーハトーブ館へ。賢治の生涯についての詳細な年表があった。上映ホールでは宮沢賢治の書いた童話のアニメをやっている。「注文の多い料理店」と「どんぐりと山猫」を観た。

宮沢賢治は「イーハトヴ(イーハトーブ)」という語を「著者の心象中に、この様な状景をもつて実在したドリームランドとしての日本岩手県である」と説明している。

f:id:ngcmw93:20210816182212j:imageそして宮沢賢治記念館へ。本当に良かった。ここを訪れるために岩手へ行く価値はある。

法華経に深く帰依して、浄土真宗の家族にも法華経を勧めて揉めたこと、樺太へ行ったことがあること、大量のレコードを収集していたことなど、知らないエピソードが多かった。

賢治が愛用したセロがあった。セロを習うため上京したこともあったらしい。割と何度も上京している。あと、宇宙をテーマに賢治の創作の根源について考察するパネルがよかった。自分が一番強い印象があるのは『永訣の朝』なんだけれど、妹トシを想う賢治の強い気持ちと、死を覚悟してからの祈りの描写の背景を知った。トシが死んでから、賢治は半年間詩を作れなかった。ちなみにトシ以外の兄弟は長生きし、弟は2001年まで生きている。

道の駅の風呂に入ったり、お土産物屋に寄りつつ、夜に遠野へ辿り着く。小さな街だった。この日の走行距離は100kmと少し。翌日の予定を決め、宿を予約して寝た。


○ 4日目

遠野、南三陸気仙沼f:id:ngcmw93:20210823205222j:imagef:id:ngcmw93:20210817174136j:image

f:id:ngcmw93:20210823191004j:imageとおの物語の館へ。主に柳田國男の展示を観る。生涯から著作までかなり詳細な展示だった。遠野物語の他に百以上の著作があり、教科書の編集までしている。柳田が訪れた場所の地図があり、見ると全国ほぼ全ての県に行っていた。佐渡にも来ている。あとフレイザーの『金枝篇』からも影響を受けたらしい。
佐々木喜善は遠野の人で、柳田に遠野の伝承を話して遠野物語が書かれた。「昔話」という言葉を初めて使った人。晩年には村長もやっている。佐々木は宮沢賢治とも交流があった。佐々木に宛てて賢治が書いた手紙が展示してあった。

柳田國男農商務省の官僚、宮沢賢治は農学校の教諭や農業技師として、本職として仕事をしつつ創作活動を行なっていたのは凄いことだと思う。片手間で出来る量の著作ではないので。人生を費やして何かを残すことについて考えさせられた。

遠野座というホールが併設されていて、語り部のおばあさんが昔話を話してくれる。残念ながら強烈な訛りで何言ってるか正直わからなかった。

 

この日の午後は世界文化遺産中尊寺に行ってから宮城・福島方面へ行くつもりだったが、急に太平洋を見たくなってしまった。平泉は内陸で、国道4号線沿いで宮城方面へ南下しやすい。厳美渓にも寄れるかもしれない。しかしどうにも海を見たい。迷った結果、フィーリングで太平洋海岸沿い南下コースを選択した。自分が通った沿岸の復興支援道路はずっと無料区間だった。

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f:id:ngcmw93:20210817174247j:image途中で見かけた無限列車と良い看板、あと龍泉洞珈琲。

 

f:id:ngcmw93:20211107071012j:imageリアス式海岸沿いを通過する

 

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f:id:ngcmw93:20210816182501j:image陸前高田にある「道の駅高田松原」に寄ったあと、宮城県気仙沼シャークミュージアムへ。

自分はサメに関しては映画『シャークネード』シリーズからしか情報を得ていないため、一回真面目な知識を仕入れる事ができて良かった。サメより恐いの、どうせ人間ってオチだろ!とめくったら鏡があり、自分と目が合う。俺はサメより恐い男…。

ここから延々と南下して宮城県を縦断、夜に福島市に着く。この日の走行距離は300kmを超えた。流石に疲れて早めに寝た。

 


○ 5日目

この日は自宅へ帰るだけ。泊まった福島市から郡山まで南下し、ひたすら磐越道を西へ向かい無事に帰宅した。

f:id:ngcmw93:20210817174505j:image今回の旅の総走行距離は873.2km。今の車は買ってから6,673kmしか走っていないので、その1割強を今回の旅行で走行したことになる。

 

3日目の朝に寄ったもりおか歴史文化館の一階で、本を2冊買って道中ずっと読んでいた。くどうれいんの『うたうおばけ』があまりにも良くて、後半はこの最高のエッセイを読める感動とともに旅行していた。以前から「ツイッター上にいる、盛岡在住の短歌の人」と認識していたけれど、この前小説がいきなり芥川賞候補になっていて驚いた。

手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗」という短歌が好きなんだけれど、このエッセイはこの句の感性そのままに(当たり前だが)書かれていた。地方都市で暮らすOLが、忙しなく日々を送りつつこんな素敵な文章を書いている、そんな事実になんだか救われる。

帰宅してから思い出したが、恩田陸『球形の季節』の舞台"谷津"のモデルは一関市らしい。あの小説にはしつこいくらいに土地についての描写がある。あの思い切りスティーブン・キングの影響にある傑作ホラーミステリの舞台を巡りたかったが、廃工場や川を見てもなあ、とも思った。


今回は民宿やゲストハウスに泊まるのを避け、ビジネスホテルばかりに宿泊した。情勢的に仕方はないのだけれど、旅先で人と話すのが好きなのでそれが出来ず残念だった。

あと、きちんと広縁スペースがある温泉宿とか泊まりたいと思う。広縁からのんびり窓の外を眺めてぼんやりするやつをやりたい。