状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

四国旅行記②


○ 3日目

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f:id:ngcmw93:20220418215026j:image朝早く目が覚め、地方ニュースを観るなどする。当たり前だが四国の天気予報をやってて良い。旅先にいることを実感する。新聞を読んだら瀬戸内トリエンナーレとかいう芸術祭が開会したとある。全く知らなかった。直島や犬島、豊島など共にこれから向かう小豆島も会場になっていた。運が良ければなんか展示が観れるかもしれない。

ドトールで朝飯を食う。仕事帰りに2日に一度のペースで行ってるのに、どうして旅先でもドトールを選んでしまうのか。しかしこの「いつものコーヒー」の味がどうしようもなく落ち着くのだった。俺はチェーン店でリズムを保つ資本主義に毒された人間…。

 

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f:id:ngcmw93:20220424160324j:image朝の街を散策する。高松市の印象は富山市に似ていると感じた。コンパクトで、街独自の交通手段(琴電の電車とバス)があって便利だったり、城下町で、区画が碁盤の目のように綺麗なところなど。

 

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f:id:ngcmw93:20220418215702j:image香川県は至るところにうどんの意匠がある。wi-fiからホテルの壁紙、フェリーの座席まで。ナチュラルに狂っている。さすが「うどん県」を名乗るだけある。街を歩けばうどん屋がいくつもある。

 

f:id:ngcmw93:20220419195600j:imageライブハウス兼CDショップのToo Niceを見つけた。自分のバンドが参加したCDも置いてくれてるらしいが、営業時間に合わず残念。自分が関わった音源がこんなに離れた場所で売られていると思うと嬉しい。ちゃんと売れてるのかはわからないが。

 

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f:id:ngcmw93:20220424152619j:image香川県庁へ。古い方の東館は丹下健三による名建築として評価されてるらしい。確かに無機質でかっこいい建物だった。1階にパネルの展示や模型もあって良い。古いばかりで何の特徴もない某県庁とは大違いだ。

県庁の裏にうどんの有名店「さか枝うどん本店」があるので行ったが休業日だった。徒歩で港の方へ向かう。

 

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f:id:ngcmw93:20220418215910j:imageサンポートという施設にある高松シンボルタワーに登る。無料で高松市街地を一望できる。屋島もよく見えた。思った以上に台形で驚く。港を出て瀬戸内海の島々へ向かう船が、波を立てて進んでいく様子が美しい。

 

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f:id:ngcmw93:20220424160512j:imageいよいよ小豆島へ向かう。高速船もあったがフェリーでのんびり向かう。片道700円。近くに他の島へ向かう船があったが、楳図かずおデザインなのか?って配色でウケた。

 

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f:id:ngcmw93:20220424160805j:image船内はとても綺麗だった。コンセントも使える。そしてヤドンまみれだった。これでもか、と言わんばかり全部がヤドン。さっきはヤドンのバスも見たし、街中ヤドンに侵食されてる。何故だ。そして船旅には最高のおやつが必要だ。

 

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f:id:ngcmw93:20220424161118j:image1時間で小豆島の土庄港に着く。素晴らしい景色だった。瀬戸内海の島々が途切れることなく重なって見える。日本海と違って穏やかで、陽射しが常に明るい。おばあちゃんの家とかが瀬戸内海にあって、毎年夏休みはそこで過ごせたらなあ、と妄想する。港には芸術祭のチケットを売ってる施設があり、ひとつ展示があった。世界最大の3Dプリンターで作った、とある。コシノジュンコのデザインコンセプトを表現したと解説がある。芸術祭のポスターはイケてるおじいちゃんが主役。あと「からかい上手の高木さん」の作者が小豆島出身らしく、その展示もあった。

 

f:id:ngcmw93:20220424161240j:image小豆島の地図。島は錨を逆さにしたような形だ。土庄町と小豆島町の2町がある。どの街も基本海に面している。自分は土庄港へ上陸して観光しながら東へ移動、小豆島町の坂手に泊まり、翌朝坂手港から出発するという予定。

 

f:id:ngcmw93:20220424161338j:imageオリーブ素麺を食べた。割としっかりオリーブを感じられて美味い。お土産にも買った。この二日間、麺ばかり食べている。

 

路線バスで島の中心地へ移動。傘形の帽子を被った白装束の人々が歩いているのが目につく。小豆島にもお遍路参りがあるのか。鈴の音が賑やかだ。自分が訪れた翌日が町議会選挙だったらしく、そこらじゅうで選挙カーが走っていた。

小豆島は島といえどそれなりに街があって、コンビニやスーパーは普通にある。ジョイフルとかファミレスもある。ガソリンはやはり高い。レギュラー175円とか。県道沿いに醤油工場が多い。あとオリーブの木がそこらじゅうに生えてる。


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f:id:ngcmw93:20220424161602j:image世界一狭い海峡の土渕海峡へ。用水路に橋がかかってるだけに見えるが実は海峡で、小豆島はここで分かれる2つの島らしい。幅は9.93m。一瞬で渡れる。こういった地理上の面白い地点を観察するのは楽しい。意味の無い趣味が一番追求するやりがいがある。周辺を散策すると、芸術祭目当てなのか観光客がちらほらいる。それ以外の人通りはほぼ無い。地図を眺める。島には土庄(とのしょう)、竹生(たこう)、苗羽(のうま)など面白い地名が多い。

 

f:id:ngcmw93:20220424161849j:image島の東側へ移動するため、またバスに乗る。ボーっと車窓を眺めていたら、なかなか目的地に着かないことに気付く。グーグルマップを開くと、思っていたのと違う道を走っているではないか。バス路線を勘違いしていたのだった。すぐに次の停留所で降りるが、何もない集落だった。ホトトギスが鳴きまくっている。引き返してバスを乗り継いでも1時間以上かかることが判明し、諦めてタクシーを呼ぶ。バス停の名前を伝えると10分で来てくれた。痛い出費だが仕方ない。

伊豆大島でも経験したけど、タクシー運転手と話すと島知識が増えて楽しい。新潟から来たと言うと、そりゃ遠いとこから、佐渡ヶ島には及びませんがこの島は日本で19番目に大きい島で…と解説が始まり、小豆島情報をたくさん聞けた。途中、寒霞渓へ行けるロープウェイ乗り場へ至る道があった。運転手はブラタモリタモリさんも来た、地層の話をしていった、この島の一番高いところは817mで…とひっきりなしに島情報を喋ってくれる。

行き先の醤油醸造所の話になると、いきなり指を四本立てて見せられる。これの意味分かります?と聞かれ製造場が四軒ってことですかと答えると違う、という。じゃあ40?と答えると誇らしげに昔は400軒ありましてな、と言われ驚く。島に400軒…そんなにあって経営成り立つのだろうか?

 

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f:id:ngcmw93:20220425171142j:image醤油醸造所で樽を眺めたり、醸造中の醤油の香りを嗅いだりした。周辺一帯で常に醤油の香りがしているのだが、ボタンを押すと強烈に濃い香りがする。

 

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f:id:ngcmw93:20220425171314j:imageマルキン醤油記念館を見学する。明治40年創業。450円くらいの入場料を払うと醤油を貰える。売店で醤油ソフトを食べた。かなり濃厚な醤油で美味い。すぐ溶けるので一気に食べないといけない。工場の一部も見学できたので、700トンの圧をかける圧搾器を眺めた。製鉄所みたいな機械群だった。

 

f:id:ngcmw93:20220425171556j:image明日の朝使う港を確認しに行くと、たぶんフェリーに車を乗り入れる為の橋が上がっていた。人工反り立つ壁だ。周辺に野良猫が何匹かいる。

 

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f:id:ngcmw93:20220425171722j:image宿に到着する。この日はゲストハウス。主人曰く他に客はもうひとりだけなのでドミトリーを一人で使ってよいとのこと。日本地図と世界地図があり、出身地をシールで貼ってくれと言われる。新潟から来た先人は3人いた。中国やアメリカ、メキシコなどから来た形跡もあった。自由帳があり、滞在した人たちがメッセージを書き残している。ちらほら英語もあった。直島とセットで来た人も多いようだ。元従業員の書き込みもあり、この宿で住み込みバイトをした後移住してきたらしい。


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f:id:ngcmw93:20220425171805j:imageしばらく休んだ後、港近くのクラフトビールが飲める屋台へ行く。この街で遅くまでやっている店はここだけのようだ。大阪から移住してきたという店長がひとりでやってた。自分の他には東京から来た観光客カップルと、地元のおじさんがひとり。店長が「ビール切れたから樽取ってくる」と不在の間、地元のおじさんが好きにビールを注いだり、料理を出したりしていて良かった。今晩の宿を聞かれたので答えると、もうひとりの宿泊客もウチに飲みに来たらいいなあと言う。

地元おじさんが面白く、MCとして場を回していた。みんなすぐに打ち解ける。島の方言の話題になった。櫓を「背負う」とは言わず、「かぐ」と言うとか、小豆島の発音も「しょ」にアクセントがくるとか。

あとは太鼓祭りの話で盛り上がる。毎年10月、大規模な祭りがある。法被を着た人々がデカい櫓を担ぎ、派手に街を練り歩く。怪我人が出るほど激しく、祭りの為の保険があるらしい。「男になれる祭りだ」とおじさんは笑った。

集落ごとに祭りの仕様も違うそうだ。ある集落の祭りでは、沖合から港へ船が乗り込んできて、船上で踊り狂う獅子舞が祭りの開始を告げるらしい。超カッコよい登場の仕方だ。ビジュアルが格好良すぎる、あれには勝たれへん、とおじさんは豪快に笑っていた。旅先で現地の人々と喋るのはやはり面白い。特に土地の話、祭りという民俗の話を地元の人から聞けて満足した。千鳥足で宿へ戻る。

f:id:ngcmw93:20220425171829j:image帰り際、「いい満月が見えるぞ」と言われたが本当にいい月だった。街灯よりよっぽど明るい。やはり島はこうでないと。

宿に帰って歯を磨いていると、もう一人の宿泊客がやってきた。軽く挨拶する。さっき行った店をおすすめしようかと思っているうちに外出してしまった。2時間後、自分が寝支度をするころに帰ってきて、案の定クラフトビール屋台に行ったらしく「同じ宿から入れ替わりでまた客が来た!と盛り上がりました」と言ってて愉快だった。