バンドで6曲入りの音源を作った。かなり良い感じの出来映えだし、初めてサブスクで出すのでしっかり宣伝したいな、と広告用にトレーラー映像と1曲フルのMVを制作した。
今回のミニアルバムは"夏の夜道を散歩するときに聴く曲"というコンセプトがあり、そんな感じのイメージそのままを映像にした。でもレコーディング期間に撮った画は無くて、2017年〜2020年頃に撮り溜めた夜の映像の中からそれっぽいものを集めて編集した。何故夜の映像が大量にあったかというと、当時バンドの別の曲のMVを構想していて、深夜徘徊の途中や朝方の運転中に撮ったものが残っていたからだ。結局そのMVは完成しなかったのだけれど、色彩を調整したり、カットの流れを工夫したり、ボヤけ感を加えることで再利用できて良かった。こうしてきちんと統一感を持たせて形にすると、それぞれのカットもそこそこ良い感じに見える。撮ったはいいけどMVとして仕上げられず、ずっと心に引っかかっていた動画の断片が映像に仕上がってよかった。一度考えたことはお墓を作って供養してあげなければならない。やはり作品は形として仕上げて、世に出して初めて作品になるんだと思う。前向きな形で供養できてよかった。
映像制作はとても楽しい。大変なのでしょっちゅうやろうとは思わないけど。過去に諦めかけた制作をここ最近少しずつ再開して、それなりに納得できるものが作れているのは嬉しい。過去の自分が救われていく気がする。
以下、例によって参考にしたMVなどの話。
きのこ帝国 - 夜が明けたら
トレーラー映像の元ネタはほぼこれ。学生時代によく聴いていたきのこ帝国の初期の曲。この映像はずっと長いこと頭の中にあって、このイメージに執着してきた。輪郭のぼやけた淡い映像と、映っているのは抽象的な風景なのに撮っている人間の目線のような映像。一人称で描かれている文章みたいだ。曲のイメージを完璧に表現した傑作だと思う。10年間もこれがやりたいと思い続けてきた。少しは同じ雰囲気が出せたような気がしている。
Title Fight - Head In The Ceilling Fan
Title Fight - "Head In The Ceiling Fan" - YouTube
超名曲。トレーラーの方はこれくらい粗いVHSの質感にしたかったけど、流石にやり過ぎな気がしてやめた。空虚な感じが堪らない。
ミツメ - 煙突
輪郭のぼやけた風景、通り過ぎるネオン、流れていくガードレールと車線の白線...夢の中みたいな映像だ。全体を通して抑えめの色彩なのも良い。ほぼ車窓の風景だけでこんなに良い映像を作れるんだ、と感動する。これも「夜が明けたら」も10年前。学生の時に繰り返し観た映像が今の自分に影響しているのは不思議な感じだ。よっぽど刷り込まれていたみたいだ。
I have a hurt - Hello Darkness
超名曲。イントロのめちゃくちゃな勢いがかっこいい。これぞギターロックバンド、って感じの曲だ。夜道は上手く撮らないとただの真っ暗な映像になってしまう。街灯や薄明るさを使って、なんとなく映す対象が照らされていなければならない。かといってバチバチに照明を当てると"撮ろうとしている感"が出過ぎてしまう。そこを上手いことやると、映画みたいな画になる…と勝手に思っている。いいPVだ。アイデア一発、って感じの撮り方は編集も楽だったりする。
HASAMI group - summer
何の映画だろうか、ロケ地は新潟市っぽいけど…と色々調べていたら『blue』という映画だった。終盤の、日が沈んだ濃紺の空をバックに自動販売機が浮かぶように光ってる構図が衝撃的に綺麗だ。これを撮りたくて何年も狙っている。日が落ちてから真っ暗になるまでの一瞬、地平線がぼんやり明るいあの時間の素材を撮りたい。
あとはHomecomingsのすべてのビデオ。特に「HURTS」「blue hour」はめちゃくちゃ良くて、あれをやりたかったが歩くだけで絵になる景色も女の子もいないのだった。
20代のうちにもう一つくらい何か撮れたらな、と思う。