状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

文学フリマ東京35を振り返る

 

目標は「会場に辿り着き、ブースを出す」「憧れの書き手に献本する」の2つだった。両方達成できて嬉しい。


直前はドタバタだった。11月18日(金)は仕事終わりにSuiseiNoboAzのライブ参戦、19日(土)は休日出勤で終日屋外での防疫業務(過酷な戦いだった…)、22時に帰宅してからコンビニで新刊を刷り、20日のイベント当日を迎える。朝方に起きてホチキス留めと包装をして、なんとか新刊が完成した。新幹線に飛び乗り、11:30に会場入り。両隣のブースに挨拶したところで看板の類を一切作ってないことに気付く。ローソンへ走って油性ペンを書い、チラシの裏にブース番号とサークル名を書いていたら拍手が聴こえた。何もわからないうちに初出展の文フリは始まった。

全1,440ブースの中で最もザコい見た目だった

10部売れたら御の字だな、と思ってたけれど結果20部売れた。ろくに宣伝もしてないのに予想より売れて満足。買ってくれた人は「ツイッターで見ました」という方がふたり居て、後は立ち読みして前情報無しで買ってくれたようだ。たぶん旅行記を片っ端から買っただけって人もいると思う(ありがたい)。「来週旅行で小豆島行くんですよ」という方とは色々話せてよかった。「土庄町」を「とのしょうまち」と初見では読めない。本で山形県の飛島を取り上げているのを読んで、20年前に出た飛島の本(無明舎出版)をおすすめしてくれた方もいた。ブースに寄ってくれた方と話すだけでも充分楽しい。名刺を渡しまくったおかげか、ブログの閲覧数が少し増えてる気がする。


あとは2022年の個人的ベスト本『うろん紀行』の作者わかしょ文庫さんに献本できた。直接会えて、話までできてよかった。緊張していたのでサインをもらい忘れた。出版元「代わりに読む人」の友田さんの本も書い、こちらはサインもいただけた。5月の時はただの客として『準備号』を買ったけど、まさかそこから半年の間に掌編集とZINEをつくり、同じ会場で売ることになるとは思ってなかった。目標になる人を見つけられたのは大きい。

その後は第一展示場の方を一回りして、気になってた本は大体買えた。斜線堂有紀先生の本やSF誌SCI-FIRE、にゃるら氏のエッセイ、あとはマイケル・ベイの映画批評誌など。作者の方とマイケルベイの映画はもはや歌舞伎ですよねみたいな話をした。アメリカエンタメの王道だと思う。『ザ・ロック』が一番好き。

f:id:ngcmw93:20221123082241j:image5月に客として参加したときも思ったけど、文フリは本当に良いイベントだ。なんていうか、各々が好きなことを緩やかに肯定してもらえる場があることが嬉しい。シウマイ弁当の食べ方の本や映画『クライ・マッチョ』で短歌を詠んだ本、W杯の優勝予想本やDeNAベイスターズの試合観戦記などが一箇所で売られるイベント、この世に他にないだろう。偏愛が爆発している本を手に取るたびに、表現はどこまでも自由で、なんでもありなのだと思える。世の中の広さを思い知り、この文学フリマという場の懐の深さに感動する。どんな物事にも本にする需要があり、面白いと思ってくれる人がいるのだ。そんなことに気付かされる。もちろん(真面目で)上質な小説や短歌もたくさんある。商業出版ではなくても、質の高いものを個人で作り続けている人がいる。そんな諸々に励まされて、自分もやってみようと思えた。イベント二週間前に急にやる気が出てもう一冊作り始め、全然完成が見えなかったときはどうしようかと思った。でも結局無事に売れた。今年の創作を総括する意味でも、参加してよかったと心から思える。


地方都市に住む貧乏なサラリーマンなので、東京のイベントにはたまにしか行けないけれど、今後もなんとか折り合いをつけて参加したいと思う。書きたいネタはいくつもあるので、自分の本をまた作りたい。あとは雑誌や合同紙みたいな媒体で書かせてもらえるように、もっと良い文章を書けるようになりたい。イベントに出たことで毎日読んで書くぞ、とモチベーションは高まった。最近3,000文字くらいの掌編ばかり書いてるので、そろそろ短編くらいの長さを書きたい。