状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

シドニー国際空港にて

f:id:ngcmw93:20260131190946j:imageオーストラリアへ出張し、無事に全行程を終えた日。自分はシドニー国際空港にいた。帰国便の搭乗まで時間があったので、空港を散策する。あまり買い物をする気分ではなかった。ぐるりと一周し、飲み物を買い、ベンチに座る。ポケットにイヤホンがあったので、なんとなく大森靖子を聴く。再生したのは大学生の頃に聴いていたアルバム『絶対少女』。なんだか、どの曲もすごく良い。こんな傑作だったのか。ひと仕事終えた自分がリラックスしているからなのか、空港の片隅のベンチで聴くのがそう感じさせるのかわからないが、なんて良い曲ばかりなんだ…と打ちのめされた。優しい曲も、鋭い曲も全部良い。生きることの切なさとか、煌めきとかが切実に歌われていた。あとアレンジがすごくうまい。「エンドレスダンス」のコーラスが凄い。工夫に満ちている。「ミッドナイト清純異性交友 」は大学時代に軽音サークルでカバーしたこともある。懐かしい。基本はバンドアレンジの曲が好きなのだが、最後の弾き語りの「I&YOU&I&YOU&I」がとても心に沁みた。聴き終えて少し呆然として余韻に浸る。空港の賑やかさが戻ってくるまでに時間がかかった。そしてふと気付く。アルバム一枚をこんなにじっくり通して聴くことが、ここ数年なかったのだ。最近の自分は、音楽を丁寧に聴くことからずいぶん遠ざかっていた。学生の頃はあんなに夢中で、バンドもやっていたというのに、自分の中で音楽は遠いものになってしまっていた。

おれは今、人で溢れる空港の片隅で、音楽に没頭していた。スマホを触ったり、他の作業の片手間ではなく、この47分間は、『絶対少女』を聴くためだけに使った。その結果、すごく心が満たされた。これは自分にとって大きな出来事で、うまく言えないが頭が急にクリアになった感覚がした。ここ最近、冬のせいなのかうっすらと気分が塞いで、心が疲れていた。それがこの「空港のベンチで大森靖子を聴いて感動する」という音楽体験で少し楽になったのだ。大森靖子に感謝したい。あとApple Musicにはアルバムのジャケットをド派手に間違ってるので直してもらいたい。

搭乗の時間になり、飛行機に乗り込む。南緯33:56から北緯35:32へ。また日常に戻ることになる。でも、どんなに忙しくても、つらいことがあっても、良い音楽で心が救われることがある。これを知っている自分は、まだ大丈夫だと思えた。