状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

大学生活を振り返る:③深夜徘徊

 

学生時代は家賃2万4千円という破格の安さのアパートに住んでいた。築45年の酷いボロ家だが大学までの立地は良く、2階の自室は日当たりも良い。洗濯機が共同なこと、よくブレーカーが落ちること以外は特段問題なく快適に暮らしていた。

大学1年の頃は自宅生の友達が講義終わりに寄って遊びに来たり、たくさんの飲み会に参加するなどしてあまり暇をしなかった。他にも自動車教習所に通ったり、外国人留学生のチューターをやったりと割と忙しくしていた。2年になるとみんなバイトを始めたり、彼女ができて友達よりそっちを優先することになり、夜自然と集まって何かする、といった習慣がなくなった。つまり暇になってしまった。こうして夜の時間を持て余すようになった頃、適当な夜の散歩に出ることが多くなった。

夜23時過ぎ、ネットでニコニコ動画を見るのに飽きた頃に行動を開始する。イヤホンをして、100円玉をポケットに入れて外に出る。ルートは特に決めずに無軌道に歩く。アルバム1枚分くらいの小一時間の徘徊。なるべく通ったことのない道を歩きたくて、アパートの隙間とか、民家の裏庭みたいな私道を通ってみたりした。途中、100円で買える自販機を見つけたら炭酸を買う。もしくはセーブオンに寄って39円アイスを買っても良い。大学周辺にはセーブオンがやたら多く、正門、中門、西門、北門それぞれに1店舗ずつあった。今はもうない。セーブオン自体がローソンに買収されてしまった。ビスケット生地のアイスサンドが好きだった。

夜道を歩くと、意外と人がいることに気づく。終電で駅に着き家へ帰る学生、サラリーマン、犬の散歩をする主婦。みんな何を考えて生きてんのかな、とか想像していた。気楽な学生である自分は、特に何も考えず生きていた。明日のバイト面倒だな、とか、次のスタジオまでにあのバンドの曲耳コピしないと、とか、実に小さな心配事しかなかった。大した悩みが無いのが幸せなことであること、あと2,3年後にはそんな余裕は失って、忙しなく生きることになることにもなんとなく気づいていた。

この頃はまだブログを書き始めていなかったので、他にどんなことを考えていたのかわからない。書かないと忘れてしまう。おそらく今の(30歳の)自分からしたらどうでもいいことばかりに興味が向いていたのだろうが、それでも19歳当時の自分からしたらそれは切実な問題だったと思う。世間知らずで、狭い世界に生きていた分、目の前の物事に真剣だった。人間関係とか、恋愛とか、音楽をやることとか。そのことを思い出せなくなるのは悲しい。

ラジオも聴かず、煙草を吸う訳でもなく、ただ音楽を聴きながら夜の学生街をほっつき歩いていた19歳の春。そんなこともあった。

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