状況が裂いた部屋

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国道8号線を巡る冒険

国道8号線は、新潟県新潟市から京都府京都市へと続く国道である。一般国道の長さとしては日本第6位の距離であり、そのルートの起源は古くは北国街道にまで遡ることができる。北国街道といえば、とある地方大学の文系学生が「北陸新幹線のルート選定に関する歴史的経緯」という卒業論文を書いた際に大きく取り上げ、院生であるゼミの先輩に添削を依頼したところ「(近現代史ゼミが主にテーマとして扱ってきた明治〜昭和初期の政治史と)あんま関係なくない?」と突っ込まれ、それを無視して3万字あまりを書き上げた、というエピソードがある。論文としてはまあまあ面白いし割と良い出来だと思うんだけど。

f:id:ngcmw93:20180701192912p:image(地図:wikipedia国道8号線」のページより引用)

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/国道8号

新潟県民にとって「8号線」は生活に深く根付いている。新潟市民からすれば「新潟バイパス」のイメージが強いだろう。「白根を通って燕のほうに抜けるあの道」くらい認識の人もいるかもしれない。長岡市民にとっても市街地から新潟方面へ移動する際は必ず通る道である。十日町方面の人間には同じく国道の「253号線」の方が馴染み深いかもしれない。上越の人間は大抵上越JCから高速道路に入るためあまりイメージがないかもしれないが、下道で新潟市へ出ようとすれば1度は経由する。とにかく面積のでかい県を南北に縦断する、主要な幹線道路として機能してきた。

 

最近車も手に入れて、自分の中でロングドライブの機運が高まっていたため、8号線を使って新潟県を縦断してみることにした。特に目的や意味はない。上越-長岡-新潟という上中下越の中心となる街を通過し、その間のパチンコ店と中古車屋ばかりの車窓を観察して、これぞ地方都市の幹線道路だ、という雰囲気を味わうのはなかなかに良かった。

 

f:id:ngcmw93:20180630152445j:image夜20時半に上越高田を出発。少し雨が降っている。

バイパス(国道18号線、南へ進むと長野市へ続く)で直江津方面へ出て、すぐに8号線に乗ることが出来た。ここから道沿いにひたすら北へ進む。

郊外へ出るとすぐに片側2車線が1車線に減少する。大きな交差点前では2,3車線に増えるが、またすぐに1車線。時々工事中の表示の先で交互通行になったりするが、夜も遅くなると大抵解除されていた。闇に半分溶けて立って警棒を回している人形が、なかなか不気味で良い。

柏崎方面へ順調に進み、しばらく海沿いを走る。柏崎刈羽原発の灯りが遠くに見える。湾曲した海岸線のため海越しに見えるので、さながら漁船の篝火のようである。そういえば夜景としては優秀なのに、夜の工業地帯みたいな夜の原発の写真はあまり見ないなと考えながら運転する。崖と海の狭間のカーブが多い道。土日はバイク乗りたちが多く走っている。

 

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8号線ファンにとって重要なスポット、8号線と116号線が分かれる分岐点。116号線はここが始点である。角度的に一つの三叉路にはならなかったようだ。面白い。

ここより海から離れ、方角的には北東の、内陸の長岡市街地方面へ進む。

8号線で北へ向かうと、途中数回も北陸自動車道と交差・接近する場所があり、「下道疲れたから高速乗っちゃおうぜ」と言わんばかりにインターチェンジを示す緑の看板が登場する。長岡ICや中之島見附ICは特に乗りやすい位置にあるので誘惑が強い…が、なんとか最後まで下道で行った。

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長岡あたりではこの道が新潟と高崎へ続くような標識を多く見かける。高崎へ行こうとすると17号線そして117号線を経る必要がある。長岡の郊外へ出ると、高架のバイパスになる8号線と17号線に分かれる分岐があった。このあたりの沿線には飲食店や薬局、コンビニなどが数多くあり結構賑やかだ。

見附を通過し、三条あたりに到達したところで一旦8号線から離脱し、真っ暗な農道を走って116号線へ乗り換える。この時点で23時くらい。知る人ぞ知る最高にディープな自販機がある店に行くためだ。

 

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「公楽園」。前から行きたくてしょうがなかった場所だ。深夜のためお化け屋敷感がすごいが外観は実際そんな感じである。1階がゲームコーナー、2階が宿泊所になっている店。

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トーストサンドの自販機…初めて見るしここ以外で見ることは無いのでは、と思う。いや、供給してる業者がいるということは他もまだあるのかもしれない。いくつか壊れているものもあったが品数はなかなかに充実している。トーストを試して見たかったが長岡で食べたラーメンで満たされていたため断念。

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ゲームにあまり興味がないので他は覗いた程度だけど、なんとなく昭和な光景が良かった。おじさんたちが煙草を吸いながら没頭している。

この後は8号線に戻るのが面倒だったのでそのまま116号線で北上する。沿線のラブホテルを数えつつ、全てローソンになってしまったセーブオンに思いを馳せる。日付が変わった頃、ようやく巻・岩室を経て新潟市へ到着した。休憩しつつのんびり運転して3時間半ほど。長旅だった。

 

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f:id:ngcmw93:20180701190801j:image翌日に古町の本町交差点へ行き、国道8号線の始点を確認した。新潟市中央区本町通七番町1054番2。7号、8号、116号、113号、17号、289号、402号、350号という一般国道8路線の起終点となっている地点。日本最大らしい。田中角栄万歳。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/本町交差点_(新潟県)

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すぐ隣には道路元標があった。

 

f:id:ngcmw93:20211118171149j:image角栄といえば、国道350号線という新潟市佐渡市上越市を結ぶ、海上の航路も含む珍しい国道がある。これを発案し建設省に作らせたのは角栄らしい。1975年国道認定。

陸上を通る日本最長の国道は東京-青森を結ぶ国道4号線だが、海上区間を含むと鹿児島-沖縄を結ぶ国道58号線(884.4 km)である。これは国道350号を真似たのか?と調べたらそうでもなく、58号線の認定の方が早かった。アメリカ占領時「Highway No.1」と呼ばれた道路が起源らしい。この辺りの歴史を調べるのも面白い。調べていると行きたくなってしまうんだけれど。