状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

大学生活を振り返る:①春の京都ひとり旅

 

なぜ今さら、というタイミングだが、大学生だった頃のエピソードを思い返しながら書く。書かないと忘れるし、書くことで思い出すこともある。

基本暗くて地味な貧乏学生であったが、時々輝かしい思い出もある。楽しい学生生活だった。

 

 

 

 

大学1年の頃は個別指導の塾でアルバイトをしていた。その塾が3月頭に潰れてしまい、大学2年に上がる春休みがまるっと暇になった。そこで旅に出てやろうと思い立ち、新潟発京都行きの夜行バスに乗り込んだ。

朝6時前、京都駅前に到着。ひどく寒かったことを覚えている。京都は盆地で、夏は暑く冬は死ぬほど寒い、という事実を知らない馬鹿な学生だった自分は、薄手の上着しか持っていなかった。ガタガタ震えながら牛丼を食べた気がする。だんだんと明るくなり、朝靄の街に浮かんで見える京都タワーが綺麗だった。雰囲気に浸りたくてくるりの『アンテナ』を聴いた。


そこから伏見稲荷へ行き、無限に続くような鳥居の石段を上がって参拝するなどした。静かな朝の伏見稲荷は幻想的だった。霧が深く、目の前の鳥居しか見えないのに、ある一瞬霧が晴れて神社の全貌が見えた時の美しさ。他にも何箇所か観光した気がするがあまり覚えていない。


夕方、同志社大学に通う友達が泊めてくれると言うので、最寄り駅で待ち合わせてアパートに向かう。確か丹波橋駅のあたりだった。高校時代の話をしながら酒を飲み、寝袋を借りて寝た。1泊のつもりだったのに、翌日も泊まっていけと言われたので甘えさせてもらうことに。昼間は八坂神社とか三十三間堂とか京都大学をほっつき歩き、夜にまた丹波橋に戻る。バイトから戻った友人に断ってシャワーを浴び、半裸で出るとそこには女の子がいた。えっ、と混乱していると友達は急に彼女が来ちゃったんだ…と申し訳なさそうに言ってきた。お邪魔だし出ようか、と言うと大丈夫だから泊まっていけと言われ、何やかんやあって泊まることに。3人でスーパーに夕飯を買いに行ったり、路上でアイスを食べたりした。寝る時はベッドにカップル、自分は床の寝袋と気まずい感じだったがすぐ寝た。


翌日は神戸まで行き、ポートアイランド周辺を歩いた後大阪でもう一泊した。高速バスで帰還。バス泊を入れて3泊5日の強行スケジュールだったがなかなかに満足いく旅行だった。

大学受験の時にひとりで泊まりがけの移動は経験していたが、旅行だけを目的とした純粋な一人旅はこれが最初だったと思う。夜行バスを予約する時のワクワク感や、初めての街で目的地が見つからずドキドキするあの気持ちはもう忘れてしまったが、この頃は確実に感じていた。旅に関する全てが新鮮だった。そして、行こうと思えば割とどこへでも行けるもんだな、と気付けた。これを境に旅の楽しさに気づき、残りの大学生活ではバイトで金を貯め、2,3泊の適当な旅行を繰り返すようになる。