正確にはあとがきではなく「ノート」であり、作者による妻への献辞である。名文だと思う。飛先生は地方で働きながら創作を続ける全ての人間の希望だ。10年に1作くらいのペースでしか長編出ないけど。途方もない時間をかけてひとつの作品と向き合う執念。SFに何の興味もない一人の人間(妻)の存在が、2度も日本SF大賞を受賞した大作家を支え続けた事実と、その一人にこの長編が捧げられたことに泣ける。飛浩隆先生の奥様に感謝したい。 My Bloody Valentineが『Loveless』のレコーディングに2年以上(と莫大な費用)を費やした話とか、中村一義が『状況が裂いた部屋』に篭り数年かけて一人で『金字塔』を作り上げたエピソードが好きなんだけれど、膨大な時間と労力が形となった作品からは、なにか途轍もない執念を感じる。この『グラン・ヴァカンス』からは、というか筆者の小説からは全てこの執念を感じる。作品は内容だけで評価されるべきなのかもしれないが、自分は作品が生まれる背景を知るのが好きだ。
all love begins and ends there - EP - girl said,のアルバム - Apple Musicall love begins and ends there - EP - girl said,のアルバム - Apple Music 自分はこの音源で一部のベースを弾いたのみで、アレンジやギター撮りには全く関与しておらず、時々メンバーから送られてくる仮ミックスに「いい感じやね」「かっこいい」「天才かよ」などのLINEを返すことしかしていない。なんならレコーディングが終わり、ミックスダウンの途中で脱退して迷惑をかけた。完全にギター陣が主役のバンドであり、95%ほどはこのバンドを主催するボーカルとギターのスタジオワークによるものだ。完成版のミックス音源が上がってきたとき、自分はその美しさに震え、デモとの音の違いに戸惑った。奥行きのある音像は、スタジオでの仮録音から劇的に変化しており全く別物だった。知らないうちにSEとかアコギの音とか入ってるし。ここまで化けるとは。そして「まるで傑作『ubik』みたいだ」と思った。ギターの歪みや空間を感じる音の処理の仕方が似ていたのだ。しかしミックスを担当したギターはボアズは特に聴いたことないと思う。全くの偶然に、自分のバンドの作品が好みに寄ってきたのだ。なんだかとても嬉しかった。
初めて『ubik』を聴いてから、ボアズは10年以上に渡って自分の中で特別なバンドだ。2013年のライジングサンで観たライブが最初だった。最後の「ubik」のアウトロ、途轍もない轟音が鳴る中、テープエコーを肩に担ぎマーシャルの上によじ登った血塗れの石原正晴がジャックをぶち抜いてそのライブは終わった。渋谷でLITEとボアズのツーマンも観た。自分が住む街にもライブで来てくれた。3人から4人、また3人へとメンバーは変わりつつ『liquid lainbow』『3020』『GHOST IN THE MACHINE DRUM』とアルバムは発売され、自分はずっと聴き続けている。でもやはり『ubik』が最高傑作だと思う。4月頃のよく晴れた日に、このアルバムを聴きながら散歩すると、どんな音楽にも代えられない多幸感がある。何度聴いても「音楽って良いものだな」と思う。これが自分の中では特別なアルバムで、あらゆる音楽で一番気持ちが良い音が鳴っている。