状況が裂いた部屋

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SuiseiNoboAz 『HAVE A NICE DAY BABYLON TOKYO』

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ボアズのライブDVDを買った。2017年9月3日渋谷O-NESTでのライブを収録したもの。2017年から2018年にかけて、ボアズはほぼ1年に及ぶリリースツアーを行った。自分は山形と東京でその内の2本を観た。特に東京で観た回はその年観たライブの中でベストに挙げたい桁違いの格好良さだったと思う。


3曲目の「tokimekinishisu」とそれに続く「14」を聴いて、もうこのDVDの元は取ったな…と思った。凄すぎる。どちらも前体制の3ピース時代からある曲だけれどこのバージョンが格段に良い。

ブレイクのキメはもうザゼンボーイズ54-71のようなバンドの域にあるようだ。石原さんの取る独特な間を他の演奏陣が完璧にキメまくる。しかも単純な超絶技巧バンドというだけでなく、演奏の上手さが表現の手段になっているのが凄い。mizukamakiriのイントロ、ギターのハーモニクスをほぼ完璧に鳴らしていて美しい…。何故かこの曲で石原さんはストラトを2本掛けて演奏しているんだけれど、体の軸の安定感が凄くて体幹の強さが伺える。曰く「音を歪ませるのは筋肉」。

石原さんは少し歌い方が変わった気がする。これまでライブによっては全然出ていなかったハイトーンがかなり出ていて別人のようだ。特に1st収録の名曲my discoを伸びやかに歌い上げていてびっくりした。my discoのアウトロはこのライブのひとつのハイライトだ。でもT.D.B.Bやgakiamiではがなり散らすように暴力的に突き刺さる声で変わらず良い。

「新宿の歌をやります」と言って始まる「elephant you」を聴いて気付いたが、この曲のイントロで石原氏が弾いているブリッジミュートしたギターで弾いているリフは「64」と同じアイデアのものだ。そしてこのリフが自分にとっての東京、新宿のイメージになってしまっている。

環状線甲州街道彼岸花…とこのバンドが繰り返し登場させるモチーフと共に、自分の中での都会感を象徴するものとなったボアズの曲。おそらく就活や旅行で何度も東京へ行っていた大学2〜4年にかけて熱心にボアズの2ndと3rdを聴いていたから、自然とそう刷り込まれたのだと思う。

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ちなみに「14」の歌詞にある「甲州街道と井の頭通り、そして水道通りが交わりそうで交わらないそんなエアポケットみたいな地点」を調べてみた図がこれ。

赤色が甲州街道、緑色が井の頭通り、青が荒川水道道路。曲の後半で「おまえ」は群青色の気配に掴み取られながら中野方面(地図の右上方面)へ歩き出す。こういう野暮な調べものが好き…。道路上の地点オタクなのでこのエアポケットは是非訪れてみたい。「14」はボアズの中でも特にドラマチックな曲だ。


ダブルアンコールのラスト、E.O.Wで「SuiseiNoboAz from Shinjyuku,Tokyo,Japan,to everywhere. 」と台詞を吐く石原氏。かつてT.D.B.B(高田馬場)で活動していたバンドはSXSWへの出演、台湾でのツアーなど新宿から世界へ活動を展開している。こんな最高のバンドが存在しているという事実だけで胸が熱くなる。今年中に新譜を出してくれたら嬉しい、めちゃくちゃ期待している。