状況が裂いた部屋

音楽と映画と日常について

「金字塔」から20年

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   今日で中村一義の1stデビューアルバム「金字塔」の発売から20年が経つらしい。発売日は1997年6月18日。「97’の世代」では一番影が薄い感じもあるが、相変わらず全国ツアーやフェスへの出演、新譜の発表などいいペースで活動していて嬉しい。ライブはなかなか観に行けてないんだけれど。「最高宝」は多分買うと思う。

 

   こうしてこのアルバムにちなんだ名前のブログまでやっている訳だし、この機会に金字塔の全曲レビューを書こうと思う。思い返せば自分がまだ高校生だった頃にたまたま聴いた「犬と猫」でハマったのが最初だった。YouTubeで2002年武道館ライブの映像をひたすら観て、アルバムを一通り借りて受験期にひたすら聴いていた。受験期に一番聴いたのはRadioheadの「OKコンピューター」だと思うけど(厨二病くさい)、同じくらい「金字塔」と「太陽」も聴いた。確かセンター試験を受けにいく朝もウォークマンで聴いて行った。こう言うのはなんだけれど、中村一義の歌詞は聴き取れない部分が多いため(いい意味で。楽器の一つと認識してる)、洋楽と同じで勉強しながらでもいくらでも聴けた。大学1年の冬には2012年の15周年記念武道館ライブへ行き、それが中村一義を初めて観たライブだった。これは前のブログに書いた気がする。アルバム「ALL」あたりまでのナカカズと100sは本当に思い入れが強すぎて全てにレビューを書きたいくらいだ。そう言ってどうせ書かないんだけれど。とりあえずこのアルバムについて。

 

 

1.始まりとは

始まりからナカカズ感の炸裂である。

さん、にい、いち、とカウント(声が近い)、「全てに溢れ、何かが無くて…」とアコギのコードが鳴っている中、ラジカセ越しのような声で謎めいた語り。なんとなく朝を想起させる音。確かに始まりを予感させる。

歌詞カードに歌詞は無い、と思いきや表紙をめくってすぐ、曲リストの目次ページより前にある。「曲がりくねる直線にある点の上でね、走る、」の「走るっ!」の発音が好き。導入曲、といえばこの曲が浮かぶくらい刷り込まれている。

 

2.犬と猫

大名曲。どう?という問いかけは何に向けてるんだろうか。そして「奴ら」とは。「街を背に僕は行く」「僕は僕。もう、最高潮!落とせ、あんなもんは…ねぇ。」「状況が裂いた部屋に、僕は眠る…。みんな、どう?」これぞ、中村一義、と言いたくなる歌詞。癖が強すぎる。ナカカズの歌詞の魅力は、メッセージ性の強さにあると思う。普通に歌詞だけ読んだら意味を理解するのは難しい。僕もさっぱりわからない。しかし曲として聴いた時、ふとした瞬間に「こういう感じなのかな」というイメージがパッと頭に浮かぶことがある。そのイメージがたまらなく愛おしくて、聴いてると本当に多幸感がすごい。「僕として僕は行く。僕等問題ないんだろうな。」というフレーズの強い意思と肯定感。あと終盤の「ブルースに殺されちゃうんだ。」が最高に気持ちいい。

当時はダイドーのコーヒーのCMソングだったらしい。なかなか想像がつかない。100sの車のCMは見たことあるけど。

 

3.街の灯

アコギ曲。ほぼ弾き語りの穏やかで暖かい曲。「外へ出て行きましょう。」の部分の声を張るところが好き。特に盛り上がるアレンジもなく、淡々とした曲調でナカカズの高音がやたら映える。

 

4.天才とは

 「膨大な数の人みんなが天才であり、創業者なんで、「今、全てが溢れちゃって」なんて言うなって。偶然は巡る!」

意味はさっぱりわからない。自分を否定した?さっぱりだ。「ウッソー⁉︎イヤ?そうなら…いいなぁ。」どんな歌詞だよ。どこまでも表現で、どこまでも自由だ。

ちょっとバタついたドラムがいい感じの宅録感で好き。

 

5.瞬間で

20秒の曲。かわいい。

 

6.魔法を信じ続けるかい?

 名曲。100sの曲に続編(?)「魔法を信じ続けているかい?」がある。素直に歌詞が好きだ。

 

7.どこにいる

 部屋、近道、街…と様々な音が流れる。土手は江戸川沿いの何処かだろうか。

 

8.ここにいる

2012年の武道館で、(記憶が正しければ)ゲストのくるりがカバーした曲。名曲。

 

9.まる・さんかく・しかく

 オープニング感のある華々しいイントロ。「まーるさんかくしかーくー…」とほのぼのとしたNHK教育で流れる明るいナンバー。ほっこりする。やたらスライドするベースが良い。

 

10.天才たち

30秒の箸休め的なトラック。英語の会話とか。なんのテープから持ってきたんだろうか。

 

11.いっせーのせっ!

なんとなく、中村一義っぽさが一番表れている気がする曲だ。

 

12.謎

個人的にかなりお気に入りな曲。永遠なるものを除けば一番かも。イントロが素晴らしい。

「夢中な時ほど人のことは考えず…られず…進む。…。

  まぁ歩いて、気合抜いて、歩いて、休み入れて、歩き  続ければ、

  いつかは会える。」いい歌詞。

最後、「この詞の最初に戻る。」時々メタ的な視点が出てくるのが気になる。

 

13.いつか

 なんとなく2nd「太陽」に収録されててもおかしくない、ほんわかした印象の曲。

「「手に入れた?その人生の地図」。
そんなもんは、飛んでっちゃったよ‼︎」

 

14.永遠なるもの

世紀の大名曲。スマパンの「Today」、スーパーカーの「sunday people」と並んで自分のテーマソングにしている、大切な曲。

 静かな弾き語りの導入からの一気に来るサビ。「あぁ、全てが人並みに、上手く行きますように…。」

突き抜けるサビと祈るような歌詞。思い入れが強すぎてちょっと文章に出来ない。中村一義が22歳でこのアルバムを出すまでの人生がこの一曲に詰まっているようにすら思える。生まれた境遇、子供の頃の日々、そして状況が裂いた部屋で過ごした膨大な時間、全てを昇華して讃美歌として歌う。言葉に還元できない多幸感。この曲と、この曲のPVが彼の人生のこの時点での集大成な感がある。

 

15.犬と猫 再び

 12分以上あるトラック。10分過ぎからゆるいスタジオの会話が始まる。会話の感じからアコギを弾いてるのは中村一義ではない模様。「冬の真っ最中に暑い日もある。夏の真っ最中に寒い日もある。気の持ちようで、人は山も動かせんのかなぁ。」

 

16.(シークレットトラック)

10分強のトラック。最後に20秒ほどの効果音でアルバムが締まる。72分。スーパーカー「スリーアウトチェンジ」と同じく、このアルバムはCDのフルタイムで収録されていることになる。

 

おまけ「最果てにて」

https://youtu.be/-Aj1vWEiyWg

隠れた大名曲。何故入れなかったんだ…。

 

この文章を書くために2週分ほど通して聞き返しながら佐内正史の写真による歌詞カードを読んでいたわけだけれど、いろいろな学生時代の思い出補正もあってかすっかり感傷的になってしまった。聴き込んだアルバムだけに、付随する思い出の数も多く、それなりに思い返すことがたくさんある。

アナログ盤も欲しいので、見つけたら買おうと思う。