状況が裂いた部屋

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アメリカン・グラフィティ(1973)

アメリカン・グラフィティ [DVD]

1973年、ジョージ・ルーカス監督作品。スターウォーズシリーズの第1作「新たなる希望」は1977年の公開なので、まだ無名だった頃。あんなSF大作ではもちろんなく、若者たちのとある青春の一夜を取り上げた群像劇。「ワンナイトもの」という括りがあるなんて知らなかった。ルーカスの故郷、モデストという街が舞台。

 

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ラジオから威勢の良いロックンロールナンバーが流れ、「male drive-in」というドライブスルーから物語は始まる。主な登場人物たちは高校生。主人公のカートは大学進学の為、明日街を出ると周囲に思われているが、自身はどうするべきかまだ迷っている。友人のスティーブ(元生徒会長の秀才)、テリー(愛称はガマちゃん)、ローリー(カートの妹、スティーブの彼女)、ジョン(カートたちの先輩、走り屋)が登場し、彼らの一晩の模様がテンポ良く流れていく。

 

映画が進むにつれてわかってくる構図として、短大へ進む=地元に残り、この町で暮らすということ、大学へいく(東部へ行く)=町を離れて夢を追う、夢を叶えるチャンスがある、という共通の認識があるようだ。奨学金を得たカートは東部へ行くことを期待されているが、本人は葛藤している。スティーブは東部へ行きたくて仕方がないが、ローリーは彼と離れたくはない。スティーブとローリーは一晩中喧嘩をしているが、この元生徒会長とヘッド・チアリーダーという完璧なカップルは結局結ばれる。ローリーの勝気な性格と引きの強さ、でもどうしようもなくスティーブのことが好き、というジレンマが良い。最高のヒロインだと思う。あとはまあ、とにかく可愛い。

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作中、終始ラジオが流れており、62年の流行だった(と思われる)曲が流れている。ぶっちゃけビーチボーイズくらいしかピンとこない。終盤、カードがラジオ局を訪ねるシーンがあるが、ここでDJの「ウルフマン」が登場する。ウルフマン・ジャックは実在した有名なDJらしく、その本人が演じていたようだ。顔の濃いいかにもなキャラだった。

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キャロルとジョンの会話で「パパはウルフマンは黒人だから聴いちゃダメって…」という台詞があったり、カートの前の夢は大統領補佐官になってケネディと握手することだった、などの話から、舞台となっている1962年当時の時代が読み取れる。もちろんそれ以外にも、街を走るフォード車、飲食店の派手なネオン、ビーチボーイズがニュー・グループとして紹介されていることなどから60年代初頭の雰囲気とロマンがたっぷりと味わえて楽しい。

 

この映画の最も美しいシーンは、中盤の「ジョニー・B・グッド」が流れる場面だ。ジョンの車に乗ったキャロルが、隣の車から水風船を顔面にぶつけるいたずらをされる。「次の信号で抜き返して!仕返しよ!」とブチ切れるキャロルにオーライ!とノリノリのジョン。信号待ちの間に車から飛び降りた2人はジョニーBグッドをBGMに、さっきの車にスプレーをかけまくる仕返しをする。本当にきらめいている。やられる方も楽しそうなのがたまらない。

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物語のクライマックスで、朝方の郊外でジョン・ミルナーハリソン・フォードが演じるボブ・ファルファの走り屋が対決をする。その後、カートは皆に見送られながら旅立ち、大団円といった感じでエンディング。必死に探した白いTバードと思しき車が眼下を走っているのを見ながらも、どこか吹っ切れたようなカートの表情が良い。

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飛行機が飛び去った青空を背景に、4人の登場人物のその後が文章で紹介され、そのリアルさとやるせなさに少し感傷的になってしまう。カートは作家としてカナダ在住、スティーブはモデストで保険屋として暮らす。テリーはベトナム戦争で消息不明、ジョンは飲酒運転の巻き添えに会い死亡。残酷に明暗が分かれる。後半の2人の死がつらいが、どこか納得できてしまうのも悲しい。

 

ここからは完全に余談だが、最近大好きなweezerの「バディ・ホリー」のMVを観ていたら何故か既視感を覚え、何度か繰り返し観た後にスティーブが出てる!と気がついた。調べたところ、どうやらこのMVは「ハッピー・デイズ」というテレビドラマへのオマージュ(というか登場人物がだいたい出てるのでまんま)らしく、このドラマはアメリカン・グラフィティに影響されて作られたものであり、その流れでスティーブを演じたRon Howardが出ているらしい。繋がっている。

この一連の文章はこの気付きががきっかけで書いた。

 

ちなみにロン・ハワードは「アポロ13」や僕の大好きな「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの監督でもあった。全然知らなかった。無知で恥ずかしい。wikiによれば2018年公開予定のハン・ソロを主役に据えたスターウォーズスピンオフの監督でもある、とあったので45年を経てまたハリソン・フォードと共演するのか!と興奮したが、このハン・ソロ役はフォードではないらしい。がっかりだ。