状況が裂いた部屋

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SuiseiNoboAz「liquid rainbow」

   傑作だった。長い間、待ちに待った甲斐があった。前作「ubik」を超える最高のアルバムだと思う。本当に良かった。興奮が冷めないうちに文章を書く。

 

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   1月末、新譜の発売がアナウンスされた。ツイッターをしていたらいきなり目に飛び込んできた、おそらく新宿で撮られたであろう新アー写にいつものフォントで「liquid rainbow 2017.3.22 OUT.」の文字。鮮やかでカッコいい。こういうプロモーションの仕方も含めて、このバンドの姿勢全てが好きすぎる。

 

   しかし詳細を見るとフルアルバムだけど9曲入りでしかもシングルで発売済みのmizukamakiriとgleenlandが収録される…3年半以上も待たせたのに少し物足りないかな、とほんの少しだけがっかりしたのも事実だ。とはいえやはり新譜が聴けると思うと嬉しくて、1stから3rdをいま一度聞き直す他にライブDVDを見直し、さらに石原正晴botを遡り語録にファボをつけるなどしてワクワクして過ごした。いい歳してすっかりキッズである。しかしこの人どんだけファズ好きなんだ…。

 

   3月に入るとめちゃくちゃクールなPVとレコーディング風景の映像が公開された。PVはモノクロの無機質な雰囲気で演奏するメンバーの映像と(4人体制になってからの他のメンバーを初めて確認した)と新宿の雑踏がマッチしてとても美しい。あとモノクロの画のせいか単純に画質がかなり綺麗に見える。監督はフォトグラファーや映画監督として活躍されてる人らしい。トレーラー(というかただのレコーディング風景、高野メルドーによるhypercubの間奏)の方を見てからは「心の一等賞をお前にあげるよ」という台詞を使いたくて仕方なかった。まだ使えてない。

https://youtu.be/cqSFQxkyQKU

 

   そしてついに3月下旬、リリース前にフラゲ、もしくはamazonで予約、まではしなかったが一番近い休みだった土曜日の朝にタワレコへ向かい普通に買った。ジャケのポスターがついてきた。CDの帯書きは正直ちょっとダサいと思う。

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   まず1回通しでヘッドホンで聴き、歌詞を読みながらスピーカーで聴き、いま3回目を流しながらこの文章を打っている。最高だ。とことん音が良い。2曲目の「PIKA」まで聴いた時点でこれだよ、こういうアルバムを待ってた!となり、「gakiami」でまたエグい曲作ったな…となり、8曲目の「hypercub」でなんかもう良すぎて泣きながら笑った。1枚のアルバムを聴いただけで、自分がここまで感動できることに驚いたし嬉しかった。ボアズというバンドに、石原正晴という人間にこんな傑作を生んでくれてありがとうと言いたい。ほんとバカみたいに感情的な感想しか出てこない。「良い、良かった!」だけの感想で終わっても良いのだけど折角なので文章を書く。

 

   PVで聞いていた1曲目「liquid rainbow」。既にPVで30回くらい聴いていたが、最初聴いた時はこうきたか…‼︎と痺れた。無機質なSEからの鋭い語感で繰り出されるリリック、「リキッドレインボウがやってきて 俺たちみんなを助けてくれる」という謎の歌詞。ヒップホップ的な要素がきて正直ちょっと戸惑う。歌われてるテーマは相変わらず都会的。石原さんの歌詞は一貫してバビロン、新宿はどんな場所なんだろうか。住んでるらしいけど。

 8曲目「hypercub」。音の奥行き、ギターの音色の美しさ、そして例の間奏の轟音ギターパートの素晴らしさ。シューゲ要素が一番感じられるところでやっぱり一番好きな曲。ファズを踏みつけてワンコードをひたすら引き倒す高野メルドーの男らしさに惚れ惚れする。

歌詞があるかと思ったら静かなインスト、というかSEみたいな音が流れるだけの9曲目「have a nice day,Babylon tokyo.」でアルバムは終わる。余韻曲。

 

石原さんの趣味なんだろうけれど、曲名や歌詞によくSF的なモチーフが出てくるのが好きだ。

https://ototoy.jp/feature/20130702

この3rdを出したときのインタビューが記事が凄く良くて、「ubik」を聴いては思い出し、時々読み返している。青緑というテーマは美しいジャケットからも強く印象付けられるんだけれど、歌詞からも渚、水色、夏草、コーラの瓶など曲に散りばめられたイメージに統一感があって美しい。

「elephant  you」の歌詞に実話の元ネタがあった、というエピソードが特に良い。酔っ払って道の途中でぶっ倒れたまま朝を迎えて、新宿の街の空気が青緑に変わっていく様子を感じてみたい。もしそんな体験をしたとして、こんなドラマチックな曲に落とし込めるのは石原氏くらいだろう。

 

そんなこれ以上はない、と感じる程最高3rdのリリース後にメンバーの脱退があったことを思うと、バンドが続いて本当によかった、それに並ぶliquid rainbowという傑作を作ったんだから、と今更ながら感じる。

これからリリース記念のツアーが始まると思うと楽しみで仕方ない。早く生で聴きたい。