状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

迷子になりたい

    迷子になりたい。正確には「あー、自分いま迷子になってるな…」という状態に憧れてる。

 

   思えば物心ついた頃からずっと同じ街に住み、絶対に親元から出て違う場所に住むぞ…と決めていながら大学進学も上手くいかず結局街を出られず、そして就職はまあここまできたら、と同じ街に留まった。恐ろしいことに10日以上連続してこの街以外で起きたことがない。

 

   息苦しい実家暮らしに飽き飽きして、休日にどこか遠くへ行きたいな、と当てもなく車を走らせることがある。でも、「どこか知らない場所」のことを指しているであろうその「どこか」はどこにもない。20年も住んでいれば周囲の地域はどこに何があるかなんて全て知っているからだ。

 

   自分のことを知る人が誰もいない、誰にも干渉されない土地で、ひとり静かに暮らしたい。

   こんな些細な望みすら叶わない世の中は辛い。