状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

2022年を振り返る

 

結構充実した一年だった。特に創作面。2、3年停滞していた様々な物事が、長いトンネルを抜けてようやく形になった。


今年作った、自分が関わった作品

drama『紡ぐ』demo ver.MV(ベース,MV)

旅行記ZINE『香港紀行』

・掌編集『諸相 vol.1』

・drama 2nd mini album 『nocturne』(ベース)

『nocturne』トレーラー映像

『yokaze』MV

旅行記ZINE『島ZINE』

・掌編集『諸相 vol.2』


バンドが活動を再開すると同時に、色々とやる気が出て一気に本を作った。ひとつ物事が上手く転がれば、諸々がうまくいくこともある。急に創作のスイッチが入った。 5月に文フリ東京へ行ったことも刺激になった気がする。学生や老人、アマチュアから有名作家まで、分け隔てなく同じ会場で自作を売っている環境を体験して、自分もここに参加したいと強いモチベーションが生まれた。好きな書き手から情報を仕入れて、編集や入稿の仕方を自分なりに調べまくったら本ができた。手探りで作った2冊を持って7月にZINEのイベントに参加、そして意外と売れたのに気を良くしてさらに2冊作り、その勢いのまま11月の文フリ東京35にサークル出展、と半年で一気に状況が動いた。これまでも細々と文章は書いていたけれど、やはりきちんと製本して、手触りのある形に残せたのは嬉しい。そして、読んでくれる人がいると気付くのは、人に読まれることを意識して書くことに繋がる。これまでの文章は自分のためだけに書いていたけれど、読者を想定して書くようになったら表現や体裁に気を配るようになった。句点の打ち方から言い回しに至るまで、隅々まで注意するようになったのは良いことだと思う。まだ全然下手だけれど。自作を読み返すたびに校正漏れを発見して呻いている。憧れる書き手の発信する情報をかき集め、真似して、自分なりに消化して本をつくる作業は本当に面白かった。なるべく毎日読んで書くことが大事なんだとつくづく実感する。日々の小さな積み重ねでしか遠くへ行けない。

10月頃には一回ペースが落ちて、創作に取り組む時のあるある「やる気が満ちれば爆発的な集中力で一気に作れるのに、やる気に火がつくまでが長く、時間だけが過ぎていく」という問題に悩まされた。

毎日遅くまで働いて、生活して、人付き合いもしていたら、創作に向けるエネルギーなんて全然残らない。ひとりで生活を回すのって本当に大変だ。それでも毎日摂取してる小説や漫画やアニメに励まされて、まあやるか…と黙々と作業するうちにいつの間にか完成したりする。どんなに終わりが見えなくても、作り続けていればいつか終わる。好きな音楽を流したり、数少ない成功体験を思い出しながらひたすら手を動かすしかない。様々なエンタメに何度も心を救われてきたので、いつか同じくらい面白い話を書けたらいいなと思う。 

 

いくつかの制作の苦しみを経て、ようやく少し創作面でのコツみたいなものを掴んだ気がする。緩くてもいいから、エンジンをかけ続けること。頭に浮かんだアイデアを書き出して、毎日少しでもそれをなぞると、ふとした瞬間に膨らんで発展する閃きが降りてくることがある。毎日向き合うことが重要だとわかった。全く降りてこないアイデアは思い切ってボツにするけど。とりあえず一つのプロットに一ヶ月くらいは向き合うべきだ。結構根気がいる。スティーブン・キングは書くと決めたらクリスマスも独立記念日も誕生日も関係なく、毎日最低二千語を書くらしい。それを50年。途方もないことだ。


そして何より、創作は楽しい。もちろん制作のうち90%くらいは孤独で苦痛ばかりなんだけど、それでも完成すれば楽しかったと思える。苦しみながら物を作ってる時が一番生きてる実感がある。完成したときの達成感、充実感は本当に何事にも代え難い。締切に追い込まれ、力量のなさに嫌気が差してジタバタする、そんな自分を笑いながらやってる。


ベースを弾くことに関しては、もう技術面でのびしろは無いのかな…などと思っていたけどそれは練習していないだけで、youtubeを観ながら基礎練習をやったり、真剣に時間をかけてフレーズを考えたら意外と納得できるベースラインが弾けた。勝手な思い込みで壁を作るのは自分の悪い癖だ。思えば大学1年の冬、初めてオリジナル曲をやるバンドを組んだ時も「楽譜を読めない人間はオリジナルバンドを組んではいけない」という謎の思い込みがあり、かなり恐る恐る弾いていた。五線譜なんて読めなくてもバンドはできるし、音楽理論なんて知らなくても曲は作れる。うちのバンドのメンバーは多分全員TAB譜しか読めない。

大学を卒業し働き出してすぐの春に、現在のバンドに誘われた時も「社会人になったらバンドはできない」との思い込みがあった。しかし打診を断ったところでキッズ・リターンの「まだ始まってもいねえよ」ばりの言葉を投げつけられ、なんやかんや加入し、かれこれ6年以上続いている。やってみるものだ。正直、新譜はそこまで売れてないし、再生数も伸びている訳ではない。そこそこ頑張って作った動画の再生回数も止まっている。

でも、このバンドという本気の趣味は、メンバーたちの自己満足な部分が大きいし、人のために曲を作ってあげるなんて、そんな烏滸がましい考えはない。アマチュアなので。

それでも、自分たちの知らない遠いところで偶然この曲を聴いた人が、なんか感動してくれているかもしれない。作品を世に出すことには、そういうロマンがあるから面白いと思う。まずは自分たちが演奏して満足する曲をたくさん作りたい。今年は手応えのある作品を形にできたと思っている。


自分は現在、趣味で執筆と音楽と映像制作をやっているけれど、取り組む時間の割合は8:1:1くらいだ。映像は楽しいので割合を増やしたいけれど、撮りたいものが定まってないのでバンド関連の映像しかない。機材を揃えていつか本格的にやりたい。とにかく、今年はずっと足踏みが続いていた自分の人生が、また前進を始めた、そんな感覚がある。何か新しいことを習得したり、ものを作ったりするときの楽しさを思い出した。この「何か前に進んでいる感じ」を味わうこと、これが人生に必要なもののような気がする。忘れないようにしたい。

 

 

20代も終わりが見えてきたので、自分の創作に向けられる残り時間を意識するようになってきた。一生何か作ってたいけれど、時間には限りがある。気力と体力を充実させて、淡々と作り続けるしか方法はない。やっぱり創作は面白い。何かに熱中して燃えている時は生きてるって気がする。

あとはまあ、自分の年齢的にも先の人生について様々なことを考える。憧れの破天荒なアーティストも、「こちら側」だと思ってたラジオパーソナリティーも、みんな気付いたら結婚して家庭を持っているのだった。もうしばらくは自分のためだけの時間がほしいけど、そろそろ先のことも考えなくては……と思う。その辺を考える余裕を持ちたい。余裕ないんだけど。


生きていると煩わしいことにたくさん遭遇する。そんな面倒な物事と折り合いをつけて、好きなことにたくさん時間を使おうと思う。やりたくないこととは距離を置いて、やりたいことをやる。シンプルで良い。今はとにかく文章を書きまくって、面白い小説を書きたい。来年は必ず短編を書く。

酒を飲んで曖昧になってる場合ではない。