状況が裂いた部屋

旅行と読書と生活

粟島旅行記

2023年の夏、粟島へ旅行した記録。1泊2日。

 

⚫︎ 1日目
f:id:ngcmw93:20230722200246j:image10:30岩船港発。船は2019年の就航らしく、とても綺麗だった。乗客はそこそこ多い。天気が心配だったが、ギリギリ雨が降ることはなかった。

2階の座席に座ってプロ野球情報をチェックしていたら島に着いた。片道2,520円で所要時間は1時間半ほど。


f:id:ngcmw93:20230722200209j:image12:05内浦港着。民宿のご主人が迎えに来てくれる。だった1分ほどの距離を車に乗って移動しチェックイン。自分たちの他には2組の客がいるようだった。少し会話する。すぐに港の観光案内所へ行き、レンタサイクルを借りる。今回の旅のメインイベント、チャリで島一周に挑むためだ。離島に行ったらまずは一周しなければならない。1,500円で電動自転車を借りる。

 

f:id:ngcmw93:20230831182046j:image資料館を訪れた。こじんまりとした建物。島の歴史や風習、祭りの様子が紹介されている。両墓制の話が印象的だった。人が死ぬと、死体を埋める墓所と墓参りする墓所の2つの墓を作るらしい。日本で両墓制の集落は近畿地方に多いとのこと。粟島は何故か紀伊半島と文化の交流があったようで面白い。

資料館の近くには粟島小中学校がある。学校の前には島唯一の信号機があった。交通量がほぼ無い島には信号は不要だが、島の子供の学びのために設けられているらしい。

電動自転車は凄い。初めて乗ったが思ったより速度が出る。ペダルを漕ぐたびにぐんぐんと伸びる感覚が面白い。島の北西部、少し標高がある箇所は坂道を登ることになる。電動の動力のおかげでなんとか登り切れた。


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島のあちこちに短歌を詠んだ石碑がある。与謝野晶子の短歌もあった。粟島に来たことがあるのだろうか?調べたが対岸の村上に来た形跡しか見つからなかった。向こう岸から島を眺めて詠んだのかもしれない。

釜谷集落で一息つき、また坂を登る。小高い丘を登ったあたりでどういう訳か道を間違えてしまい、粟島小中学校の前まで降りてきてしまった。なんでだよ。こうして島一周の目的を遂げることなく、サイクリングは終了した。

その後は相棒とキャッチボールをしたり、温泉に入ったりしてのんびりと過ごした。宿で夕食を食べ、ひたすら『魁!男塾』を読むことに時間を費やした。大豪院邪鬼がデカすぎる。一晩で6巻あたりまで読めた。

21時に島内放送が流れる。火の元を確認しましょう、とのこと。夜風にあたりに外へ出たら、遠くから賑やかな声が聞こえる。花火をやっている家族連れがいた。静かで良い時間を過ごせた。

 

⚫︎ 2日目

朝食を食べて、港のあたりを散歩する。

f:id:ngcmw93:20230903160503j:image海へ続く堤防。

f:id:ngcmw93:20230903160339j:image発電所があった。

f:id:ngcmw93:20230903160419j:image10時にチェックアウトし、島のお土産物屋を見る。干物やお菓子が売られていた。あとは旅行ガイドが持つような三角形の旗(ペナント)など。アイスの桃太郎を買う。10年ぶりくらいに食べた。桃ではなくイチゴ味らしい。

その後は、土産物屋の隣にあるカフェで船の時間を待つ。島唯一のカフェのようで、開店と同時に満席になった。ホットドックを食べる。

f:id:ngcmw93:20230903160824j:imageフェリーターミナルの2階には喫茶店があったのだが、しばらく休業しているらしい。こちらも寄りたかったので残念。

 

 

⚫︎ 『粟島馬物語  ─ 人と暮らし ─』について

f:id:ngcmw93:20230903170602j:image島の土産物屋に「粟島馬物語」という小冊子が売られていた。面白そうだな、と直感で買って帰って読んだが、これが素晴らしい内容だった。

粟島には昭和7年頃まで馬が生息しており、その起源は源義経が対岸まで乗ってきて捨てた馬が泳いできた、とか、米沢上杉家の軍馬だ、とか、色々と伝説があるらしい。島の山で暮らす野生馬たちは、田を耕す時期になると男たちに捕まえられ、田んぼを耕すのに使われたらしい。耕し終えたらまた山に放たれた。

この冊子は、島にかつて住んでいた馬について、島の長老たち14人にインタビューし、昔の島の風土を記録したものだった。長老は大正10年から昭和一桁年代生まれの方ばかりで、皆80歳を過ぎている。そんなご老人たちが、バリバリの粟島弁で戦前から戦後、昭和の島の暮らしについて語る。馬の話も興味深かったが、戦争で大陸へ行った話、東京へ出稼ぎに出た話、昭和39年の新潟地震など、長老たちが思い思いに喋る昔話がどれもエピソードとしてかなり面白かった。どの長老も60年も昔のことを鮮明に記憶していて、それが何の脚色もなくそのまま書かれたものが、こんなに面白いとは。人の人生は物語のようだ。なんともいえず感動する。

コラムに書かれていた島の史実もどれも面白い。インタビューに登場するおじいさんの先祖に、船で漂流した末にハワイに辿り着き、7年後に択捉島を通って粟島に帰還した久太郎という人物がいた。大冒険だ。その人が帰還時に持ち帰ったガラス玉がまだあると話されている。久太郎は島へ帰ってからまた漁師をしていたらしい。

奥付には2012年発行とあった。10年以上が経過して、おそらく登場する長老たちにはもう生きていない人もいるだろう。歴史学民俗学の資料としてこういった本が重要なんじゃないかと思う。本当に良いものを読んだ。